不要问我为什么这个东西又放了一遍,一部分词汇已经用平假名替换掉了。

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阅读之前最好先游玩超级机器人大战系列游戏(旧系列或og系列、魔装机神系列)


【资料图】

「闇の記憶」

阪田雅彦(1996)

夢を見ていた。

その夢は、暗く、切なく、恐ろしい夢だった。

地下室か何かなのだろう、かび臭い湿った匂いがする。

クリスタルライトに照らされた一角以外は闇に溶け込んでおり、

部屋の広さは判然としない。

闇を恐怖の対象とするなら、その光は希望と思えるはずであったが、冷たく、硬いそれは闇よりも恐ろしい何かを含んでいるようだった。

光に照らされた一角に、なにか巨大な卵のような物体が置かれている。

その表面には、判読不明な文字がびっしりと彫りこまれ、クリスタルライトの光を浴びて、奇妙な陰影の模様を形作っていた。

その物体の前にさいだんが築かれている。

高さは三十センチほどの円形の台で、ちょうど人が一人横たわる事が出来るほどの大きさだ。

彼は、その上に全はだかで仰向けに横たわっていた。

そして、その傍らには、同じくいっしまとわぬ姿の母親、美咲がいた。

なにやら一心不乱に、何かを唱えているようであったが、その声は小さく彼の耳までは届かない。

硬質な光に浮かび上がった母の姿は美しかった。

まもなく30歳になろうとしていたが、肌には張りがあり、とても子供をさんだとは思えない。

うつむき加減で何かを唱えているため、腰まである黒髪が顔を覆い隠して、その表情を伺い知ることはできなかった。

その光景はあまりに異様で、彼は重たく垂れこめた不安と恐怖の感覚に支配されてもおかしくないはずであったが、彼の心の中には母に対する絶対的な信頼感があり、それがすべての不安と恐怖をぬぐい去っていた。

お母さんがいるんだから安心だ。

少年は心の底から、母親を信じていた。

今までだって、いつもお母さんが守ってくれた。

彼が地上人とラ·ギアス人のハーフである事実は、例え王族であっても周囲の冷ややかな視線からは逃れさせてくれなかった。

いや、むしろ王族であったからこそ、野蛮な地上人のちを受け継ぐ異端の王子として、彼は陰から蔑まれ、罵られていた。

父は彼が受けているそのような陰口に対しては、まったくの無関心だった。

それどころか、息子である彼にさえ、全く関心を寄せていないように思えた。

有形無形の嫌がらせが彼を襲った時、敢然と立ち向かってくれたのは、いつも母であった。

彼女自身が似たような境遇にあり、同じような嫌がらせにさらされているにも関わらず、彼女は体を張って彼を助けてくれた。

彼にとっては母親は絶対の存在だった。

何をしているかは解らないが、母が僕に悪いことをするはずがないではないか。

彼は、そう信じていた。

やがて、長かった詠唱も終わり、母がゆっくりとその面をあげた。

美しい顔だ。

だが、その美しさの中には、儚さや脆さが多大な面積を占めていた。

ゆっくりとした、現実味の感じられない歩調で、母は近づいてきた。

「…愛する我が息子…」

愛しげな表情で、母が語りかけてくる。

その声はいつもと変わらず慈愛に満ちていた。

「あなたは、私がこの世界でたった一つだけ愛するもの。

だって、私のたった一人の息子ですものね。

あなたがいなければ、私は生きてはいられないでしょう。」

そう言いながら母は、彼の唇に軽くきすをする。

「でもね、私は疲れてしまったの。この世界にも、私の夫、カイオン大公にも」

それは、彼もうすうす感づいていた。

彼の父カイオン大公は、母に対して表向きはまだ愛情を注いでいるように見せてはいたが、実際にはすでに彼の愛は、母の上には注がれていなかった。

「日本は知っているわよね。何度もあなたに、その風景や出来事を聞かせてあげたわ」

彼は、軽くうなずいた。

実際には行った事はないが、母の口から何度も日本について聞かされているうちにまるでそこの住人であるかのように、詳しくなってしまった。

「いいところよ。友達もたくさんいたわ。お父さんやお母さん、ミキにユッコに神崎くん…みんな、日本にいるの」

母が父に疎まれてからは、母の思い出話を聞かされるのは常に彼の役目だった。

父の心が母から離れてからというもの、母が過去を振り返る事は、以前にもまして多くなっていた。

実際の所、母が過去しか見なくなったから父が離れたのか、父が遠ざかったから母が過去に閉じこもったのか、わからない部分もあった。

「帰りたいの、日本に…お父さんやお母さんがいて…みんなが待ってるの。

帰らなきゃいけないの、私は。」

母のその言葉は彼に小さなショックを与えた。

今まで、思い出話は何度もしていたが、ここまであからさまに「帰りたい」と言っているのは初めてだった。

「帰りたい…帰りたいの…もういや、こんな所は…」

母はもう既に彼の事を見てはいなかった。

彼女の記憶の中にある、別れて久しい故郷を見つめているのだろうか。

お母さんは、そこまで故郷に帰りたかったのか…。

彼は、母に対して改めて同情を禁じえなかった。

「でも、あなたを置いて帰る訳にはいかないわ。だってそうでしょう?あなたはわたしの産んだ、大切な息子なんですもの。あなたは私のものなのよ。」

さっきまでの、思い詰めたような口調からうってかわって、再び優しさにあふれた母の言葉だった。

だが、その言葉の響きの中に、かすかに冷たいものが混じっているのを彼はびんかんに感じ取った。

「だから、私はあなたを誰にも渡したくないの。わかるでしょう?あなたは私の分身、もうひとつの私なんですもの。」

そう言って母は目をそらした。

「日本に帰るのに、あなたを連れていく訳にはいかないわ。あなたはここ、ラ·ギアスで生まれ育ったんですもの。日本に連れて行けば今よりもっと酷い目に遭うのはわかっているし。でも私は日本に帰るの。帰らなきゃいけないのよ。今までは、あなたがいたから、帰る事なんて出来なかった。でも、これからは違うわ。あなたは私の一部になるの。私達はかつてそうだったように、もう一度一つの体に戻るのよ。」

母はもう、彼を見ていなかった。

彼女の目に映っているのはクリスタルライトの光。硬質で無機質な感情のない光だった。

「難しい事じゃないわ。そうよ、そうなの。ちっとも難しい事なんかじゃない。実に単純で、素晴らしいことなの。元々ひとつだったものが二つに別れるという事が不自然だったのよ。それは、おかしなことよ。だから、あなたは私とひとつになるの。わかる?わかるよね。あなたは私なんだもの。」

そういって彼女はもう一度彼の目を覗き込んだ。

そこにははっきりと、クリスタルライト以外の光が宿っていた。

それでも彼は母を信じていた。

母の言わんとしている事は、身勝手で、常軌を逸しているとは思ったが、論理的に間違っていようとどうしようと、母の愛情だけは疑う事が出来なかった。母の右手に光る、銀色のきょうきを見ても、それはいささかも揺るがなかった。

そしてそれが彼の柔肌に押し当てられる瞬間まで。

「いっ?!」

痛みが現実となって彼を襲った。

彼のみぞおちからかふくぶにかけて、浅く皮膚が切り裂かれ、せんけつが滲み出していた。

「きれいよ。とっても。あなたのちは、私の中に生きるの。そして、私と共に生き続けるのよ。」

母は、ちの付いたそのきょうきをまるで極上の蜜でもあるかのように、

うっとりと舐めていた。

「そしてあなたのにくは、神に捧げる神聖な生贄となるわ。そして私は日本に帰る。帰ることができるの。もちろんあなたも一緒よ。私の中に、あなたはいるわ。」

そして、母は彼のからだの上に屈み込むと、流れ出るちを丁寧に、丁寧に舌で舐めとっていった。

その光景は、彼の神経を麻痺させるのに充分なショックを与えていた。

頭は冴えているが、体が恐怖に打ち勝てず、動けない。

「こわい?うふふ、恐がらなくていいの。あなたはしぬ訳じゃないんだから。もう一度、私の中に入るだけ。いいわよね。あなたは元々わたしのものなんだから。」

そう言って、彼女は彼のむねに、ナイフを突き立てた。

「!!!!」

言葉にならない叫びが、彼の口からほとばしる。

金属の冷たい冷気が感じられたのは、ほんの刹那の間だけだった。

すぐに焼け付くような熱さが伝わってくる。

彼の瞼に映ったのは、もはや昔日の面影を残さない、母の恐ろしい形相だった。

いやだ!

しにたくない!

こんな、訳のわからない事でしぬなんて…

どうして僕が…僕にもっと力があれば助かるのに!

こんな理不尽な力で、僕の命が終わっちゃうのか…

いやだ…いやだ…いやだ!!!

強烈な思念が、彼の中で渦巻く。

母に対する愛情。

母に対する憎悪。

怖れ、悲しみ、怒り…そして絶望。

すべての感情が、激流となって彼の身体の中を駆け巡っていく。

その奔流は彼の身体を突き抜け、目に見えない力となって荒れ狂う。

力が欲しい。

理不尽な敵意から、自分を守り抜くだけの事が出来る力が。

その思念に答えるかのごとく、一つの意思が彼に語りかけてきた。

< …力が、欲しいか?… >

それは断末魔の幻聴にも思えたが、ひどくはっきりとした言葉だった。

< 力が欲しいか? >

再び声が聞こえる。

少年は、我知らずその声に答えていた。

欲しい!こんな事で自分の運命を終わらせたくない!

力を!限りなき力を!

< …よかろう。ならば、汝、我と契約せよ。

さすれば我、汝に無限の力を与えん事を約束す >

<契約?わかった!僕に力をくれ!

誰かに操られる人生なんてまっぴらだ!>

< …承知した。

たった今より、我、汝と契約を結ぶ。

汝の名は? >

< シ…いや、クリストフ!

クリストフ=グラン=マクソードだ!! >

<クリストフ=グラン=マクソードよ。

今、汝は我と契約を結んだ。

我を崇めよ。我の名は… >

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「シュウ様、どうかなさいまして?」

そこは彼の寝室であった。

いつの間にか横には紅茶を持ったサフィーネがいた。

「サフィーネ、いつからここに?」

「シュウ様の部屋から声が聞こえたものですから…お目覚めの紅茶はいかが?」

「・・・・・・・・・」

無言でシュウは身を起こした。

(まっ!上半身はだか!なんておいしそう…あら?)

サフィーネの目線が彼の左むねにある大きな傷跡の上で止まった。

「シュウ様、その…あ、いえ」

途中まで口にした疑問を、サフィーネは呑み込む。

シュウが過去に付いて触れられる事を嫌っていたのを思い出したのだ。

「この傷ですか?…そう、これが全ての始まりでした。過去に、この私に傷を付けた人物がいましてね。これはその名残です。もっともその報いでしょうね、その人物は今、廃人同然で幽閉されていますよ…ククク」

驚くべき事に、シュウの口から、ほんの一部とはいえ彼の過去が語られた。

だが、その語り口調に尋常でない何かを感じ取ったサフィーネは、思わず話題をそら

していた。

「悪い夢でも見ていらしたんですの?うなされておられましたわよ」

「サフィーネ、あなたは自分の心と身体が、自分のものではないように

感じられた事がありますか?」

「ええ、もちろん」

「?」

「私の心と身体はいつだってシュウ様のものですもの」

「…契約…それがすべての始まりだった…という事ですか」

「え?今何かおっしゃいました?」

「…何でもありません。さて、そろそろ計画の最終段階に入らねばなりませんね。

サフィーネ、準備はできていますか?」

「あ、あら、もう始まるんですの?わかりました、すぐ準備を整えさせますわ。

少々お待ちを」

「急いでください」

そう、まもなく彼の進めてきた計画が、大詰めを迎えようとしていた。

だが…本当に、彼自身の意思で、この計画を進めているのだろうか?

その疑惑は、彼の中で日ごとに膨れ上がっていた。

そして、ある一人の少年と出会ったことにより、それは確信に近い形で、

彼の中に根付きつつあった。

マサキ=アンド―。

彼は、シュウが望んでやまなかった、真のじゆうを体現しているかのように見えた。

何時の日か、彼の手によって、何かが変わる。

そんな予感が、心の中に芽生えていた。

ラングラン新暦4958年、九月に入ったばかりのことであった。

END

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